このコラムの構成

自治体広報の弱点

自治体(市町村や都道府県)の広報には、弱点があります。

・広報によって、何人くらい、どんな住民に情報が伝わっているか?

・その情報は、どのように伝わっているのか?

これらを把握する方法がありません。
そして、自治体内の人事異動(ジョブルーティン)によって、

・広報の目的は、滞りなく印刷物を発行すること、サイトを更新すること

になりがちです。
こうした弱点によって、いくら精力的に広報をSNSや動画など、手段を増やしてもあまり効果があがりません。

自治体公聴の弱点

自治体(市町村や都道府県)の公聴にも、弱点があります。
それは、思い込みや情報不足、先入観をもとに回答ができてしまう世論調査と同じ弱点です。

回答者の思い込みや先入観を含む認知は、ひとりひとりにばらつきがあります。
そのため、聞けば聞くほど、隘路にはまり込んでしまうケースもあります。

近年は、意識調査などのアンケート以外にも、住民の声をデジタルツールを応用して聞く取り組みが行われていますが、聞くだけでは政策形成になりません。

そして、意見として「声」を上げられる人だけで社会や地域ができているわけではありません。意見を言語にするという行為はハードルが高いのです。
この現実と向き合わない公聴では、却って住民側の不満が高まってしまいます。

(図1)は、全国の市町を対象に行われた調査結果(プレスリリースはこちら)から抜粋です。約8割の市町で広報・公聴の効果検証が行われていません。また、行っていても非公開がほとんどです。


(図1)効果検証が行われない広報・公聴

回答があった自治体はある程度の積極性を持つ自治体が多い印象ですので、実際はもっと多くの自治体で効果検証が行われていないと思われます。
目的と手段が明確でない取組の多くは資源の浪費になります。

どうやって克服するか?

長年の課題である、この弱点。
克服は簡単ではありませんが、不可能ではありません。

可能にするアプローチは、

1.行政の都合よりも、住民ひとりひとりにとって当事者性のある事柄で、

2.先入観や誤解を最小化した輿論としての意思表示を、

3.政策形成につながる形の、

コミュニケーションとして行うことで対応できます。
私達の社会、地方自治には失政につながる構造が存在しています。

そのため、いままでどおりのことをいくら上手にやっても、地域経営は行き詰まります。
毎年、同じような調査、タウンミーティング、SNSの活用などを行っても、住民と行政が連携した地域経営の困難さは克服できません。

これからの地域経営に対応するコミュニケーションをつくるのは、取り組みを起案する段階からの設計/デザインがとても重要なのです。